TOUCH WOOD VOL.2

銘木女子が、コネなし・カネなし・やる気のみで世界進出に挑んだ先は、「東方の真珠」香港 。

岐阜の田舎から、世界の都心「香港」へ。

東方の真珠と言われるキラキラした夜景。早朝から狭い通路にせかせかと溢れる人々。速すぎるエスカレーター。昼夜多言語が行き交うバー。のんびりとした岐阜で生活する私にとって、それは何もかもが初体験でドキドキする仕事。

そうだ、香港に行こう。

「日本の銘木が、世界で売れますか?」よく分からないまま取り合えず申込んだ行政主催の中国ビジネス相談会。倉庫で撮りためた写真をタブレットに入れ、銘木の写真を見せながら聞いたことが全ての始まりだった。「あまり見ないものだから分からないけど、いいんじゃないの。」商社OBで現地経験豊富なアドバイザーが、海外経験さっぱりの中小企業に凄い熱量で言ってくれるものだから、(しかも無料で!)数度の打合せが終わるころにはすっかり「そうだ、香港いこう。」と前のめりに夢を膨らませていた。

知り合いやコネゼロで「展示会に出てみる!」と決める方(私)も勢い八割であれば、承認する方(社長=父)も「いいんでないの。」と感覚八割。こうして「香港世界中小企業EXPO」への銘木一枚板の出展は、五分で社内即決した。

展示会出展への道のり

さて、決めたは良いが、分からないことが多すぎる。一枚板をどうPRするか、お客様のフォローはどうするか、いや、そもそも板たちをどうやって運ぶか、旅行会話程度の英語で対応できるか、等々。社内結成ホヤホヤの名ばかり「海外チーム(留学経験者なし)」は、毎日悩んでいた。

多少の輸出経験はあったものの、初めての「展示会物流」ということで言われるままに航空便で荷物を送ったのは大失敗だった。板が飛行機に乗ると、人間が乗るのの何十倍も高い。「板様」である。現地での設営時に出展他社が大きなスーツケースを一人二つ持ってきて、スーツケースからちゃっちゃと自社商品を並べだしたのを目撃した時には、ショックでポカンとしてしまった。後に海外展示会に出る度に良いやり方を発見したのだが、何しろ当初は「展示会正規物流業者」という名の独占物流一択しか知らなかったため、船便で送るのの五倍の費用がかかってしまった。高い勉強代だった。

そして不運は重なる。通常展示会は3×3メートルで1ブースなのだが、ここは2ブースを3社で分けるという、後にも先にもこの時だけの奇怪なブース配置。(助成してもらって出展しているので文句は言えないが…)さらに悪いことに、うちは3社の真ん中の割当てで、間口2メートルの中間に一本柱が立つという、最悪なレイアウト。これじゃ板を展示したところで真ん中に邪魔な線が入っちゃうじゃない、と思いながらも2メートルほどのトチの板を立てると、今度は右隣のブースから「圧迫感がある」と白い目を向けられる始末。

日本の木の美しさを伝えたい。

迎えたEXPO初日。気を取り直しトチ・ケヤキ・イタヤカエデ・タブの一枚板を満を持して展示した。

このEXPOでは初日から様々な濃いメンツと握手を交わした。香港に拠点のあるフィジーの女性社長やモロッコ出身のドバイの商人と仲良くなり、同郷岐阜県のゼネコンと出会い、インドネシアメディアのフランス人に取材されるなど、国関係が訳分からない。これがグローバルか。

そして狭いブースに数時間いると、どの国の人も決まって同じ行動をしてくれる事が分かった。①近づいて木目を撫で、②パアッと明るい笑顔でこちらを見て、③「Oh!」。95%はこの3ステップで間違いない。どれだけ言葉が通じなくても「木をステキと思う気持ち」は世界共通語なのだと実感した。こうして、日本の木の美しさを世界に伝えるぞー!という使命感と夢の混じったような気持ちが生まれたのだった。