TOUCH WOOD VOL.9

外国材が20年ぶり高値。時代は国産材へ移る…のか!?

2018年になり、年初の恒例行事である木材業界の新年互例会に出席した。岐阜の地元密着型商売では景気が良いのか悪いのかイマイチ実感できず、パッとしない気持ちになるのが残念なところだが、世の中は景気が良いのかもっぱら外国材の「値上げ」が話題だった。何やら20年ぶりの高値らしい、米松である。日本の森のために、日本人だから日本のモノを、という綺麗ごとからではなく、需要に対応するため、いよいよ国産材の出番が本気で来るのか…そんなことを考えながら、国産材の製材工場に行ったときのことを思い出した。

飫肥スギの製材工場見学

宮崎県の日向灘の海岸沿いを車で走っていた。その後夜中に分かったことだったが、その日はこれから熊本地震の本震が起こる日で、前日の余震を受けて、15分に1回なる携帯の地震速報に周りの民家の人々も庭で海を見つめていた。海岸横の一本道で緊急地震速報が鳴った時は思わず高台を探したが、あいにく視界の中には見つからずドキドキしたのを覚えている。程なくして工場についた。そもそも岐阜からわざわざ日向まで訪れたのは、私の会社で主に大径木の活用をいろいろと模索しているうちに、飫肥スギの大径木活用をどうしたら良いかと聞かれ、じゃあ見に行ってみますという軽い流れだった。そう言う訳で今回は家族同伴で特別に許可をもらい、1歳の息子も連れて日本有数の規模の製材工場見学ツアーに参加した。

宮崎県の飫肥スギの原木置き場から、国産材を使った木材や集成材の製造工場、天然乾燥のための置き場、無数の人工乾燥窯、バイオマス発電所まで整備された施設があり、ラインは殆ど全自動で原木が削られたりひっくり返されたりして製品として出てくる仕組みだ。歩道橋のように機械の上を通る見学ルートは常に震度1くらい揺れていて、余震もまったく気づかない。今思えば、震災という有事でやる事が膨大にあるであろう工場が、抱っこ紐状態の母親をよく受け入れてくれたと思う。

山を守るということ

飫肥スギは非常に良い木ではあるのだが乾燥しづらく、また飫肥スギに限らず柱等の構造材を生産するには大径木が逆に使えないらしく、原木置き場の中で「用途未定」らしき置き場に積み上がっていた。国産材の山を守るために国産材を使うということは、使いたいサイズや等級のものだけ買っていてはダメで、現状使い道がない用途の原木も一緒に買わないと山を守る事にならない、という言葉が印象的だった。原木、製材、私たち流通、設計、工務それぞれの立場の人々が意識を持って連携して仕事をしていかないと国産材活用は進まないと実感し、国産材をなぜ使っていかないといけないかをきちんと伝えなければという気持ちになった。

熊本地震が起こって一旦は訪問を控えようかと思ったのだが、工場スタッフの方の山や国産材にかける思いや温かいホスピタリティに触れられ、来て得たものは山ほどあった。そして当初の目的の大径木の活用提案というところだが、銘木好きとして、せっかく大径ならテーブルや家具用にはどうか?と話してみたが、今年に入り例の大径木がラフに使える大き目サイズの床材となってDIY賞を受賞したとの知らせを受け、確かにその方が良かったと納得した。