TOUCH WOOD VOL.8

木の香りで眠れる!?なんとなくの感覚「木って良いよねー」を、科学的に実証する。

アカデミックな分野に造詣が深くない私が、30を過ぎて大学の研究室で実験について議論しているとは思わなかった。テーマは「木の香りが人の健康に与える影響」。日本の桧や杉、檜葉(ヒバ)が発する芳香が、人の健康改善に役立っているというのだ。日本人なら誰でも「木ってなんか良いよね」と感じていてくれるので、材木屋の立場では有難いのだが、あくまでもそれは都市伝説的とでも言おうか、その科学的根拠は誰も知らないのが不思議なところだと思っていた。今回はそれを、科学的に実証しようと思っている。なぜかというと、私の会社では「木の塗り壁 Mokkun」という「桧・杉・檜葉の国産材針葉樹を粉末にして塗り壁に仕上げた製品」を作っており、木の効能が人に健康や精神に与える影響が、その塗り壁の機能価値になるからだ。

そういう訳で、かれこれ3年以上大学との共同研究で木と人の関係を調べている。研究室でネズミに実験協力を要請し、木の塗り壁の部屋とクロスの部屋で生活してもらった。すると、木の香りのする塗り壁の部屋のネズミは、体をリラックスさせる副交感神経が働きよく食べることで体重増加した。方やクロスの部屋のネズミは、副交感神経の数値、体重は変化なし。結果を聞いているとやっぱり木は良い!木の香りはリラックスさせる上に食欲も増進させるのか。と思ったが、いやちょっと待て、体重増加は果たして良いのか。これじゃイソップ童話の「都会のネズミと田舎のネズミ」的な「どっちもどっち、何を幸せと感じるかは人(ネズミ)それぞれ」なんてオチにはならないだろうかと考えが逸れていったが、先生の結論としては、桧や杉、檜葉の木の香りは人の健康や精神をリラックスさせ「眠れる」ための環境に良い作用をするとのことで、ひとまず安心した。

「木の香りで眠れる」

「木の香りで眠れる」というのは、木の匂いを嗅いで眠くなるという事ではない。木は調湿や消臭、保温性能に優れ、ニオイや有害物質を吸着し空気の質を向上させるだけでなく、香りに含まれる成分が人の自律神経に作用してリラックスさせる、という理屈だそう。ストレスフルな現代人には睡眠にこだわる人が年々増え続けているようで、確かに私も独身時代都会のオフィスで働いていたときは、「気持ちよく眠る」ためにハーブティやアロマディフューザー、オイルなど女子らしくグッズを集めたりしたことがある。だが10年経ち魔の3歳児を育児していると、毎日倒れるように眠りにつくようになり、人曰く「泥のように眠っている」らしいので今や個人的には塗り壁だろうがクロスだろうが関係ない状態になってしまっている。

さらにクロスの部屋でもコンクリートの部屋でも昔よりリラックスしているのか食欲も増進してきて、特に私などの健康体で大雑把な性格の大人にとっては、正直「空気の質」なんてどんなのでも寝られるじゃないか。と感じてしまう時もあるが、小さな子供が鼻を詰まらせて鼾をかいているのを見ると、やっぱり過乾燥や有害物質が急に気になり、空気は大事だなぁと考えを改めるときもある。昨年からストレスチェック制度が一部企業に義務化されて良い睡眠が健康のベースになるという認識は増えていっているように感じるし、何より私の大好きな木が、眠りや健康にまで良いという事が証明されていくのはうれしいので、これからも研究室の先生にもネズミにも頑張ってほしい。