TOUCH WOOD VOL.10

日本式建築にも合う?銘木人気No.1の木、ウォルナット

一番人気の一枚板の樹種は?と言えば、銘木業界では大多数が「ウォルナット」と答えるのではなかろうか。もちろん、一番好きな、ではなく一番人気のある、という質問の場合だが。それくらい、この黒っぽくて国産材とはまるで違う木柄の木材が、スタイリッシュにも和風にもナチュラルにも何でも合うという事で人気だ。実際、日本建築や古民家風建物、和風店舗に家具や内装用としてかっこ良く使われている事例もたくさんある。

ウォルナットはアメリカ固有の樹種であり、今回私はアメリカに行って一般的にウォルナットとして認知されている「ブラックウォルナット」と、人間によって接ぎ木され出来た幻の高級木「クラロウォルナット」の2種類の原木を仕入れた。

原木求めアメリカへ

日本を一万キロ離れ、アメリカ初上陸へ。クラロウォルナットは、ウォルナットとは明らかに違う濃い縞(しま)がでたり玉杢がでたり、とにかく木目に表情があって、銘木好きにはたまらない逸品として知る人ぞ知るレア樹種だ。ただ、その生息エリアは極めて限定的なため、国内便を乗り継いだあとさらに車で同じような景色を数時間走ってようやく、まるで日本とはスケールの違う「壮大な田舎」の中の原木置き場に着いた。そこは周り一面森か果樹園で、鶏が自由に歩き回り、ちょっと大きいサイズの人たちが大きい車に乗ってゆったり生活している、絵に描いたようなカントリー風景でなんだか癒された。

テンガロンハットとサングラスを掛けた原木のオーナーは例に漏れずサイズも声も大きくて、こっちは原木を真剣に見ているのに、横から「お前の名前が聞き取れないからこのコンテナに書け」とチョークを渡してくれたり、その辺の鶏が今日だか昨日だか産んだらしい生卵をプレゼントしてくれようとしたり(飛行機移動のため受け取れず)、ウェルカムな気持ちは有難いほど感じるのだが、おしゃべりばっかりで一向に仕事をしようとしないのが面白い。日本ではわざわざ外国から訪問があるとなれば、商品と価格を揃えて待ち構えていてその場で商売を始めようと考えるものだが、家族含む数人のスタッフもアメリカ式なのかアメリカの田舎式なのか、聞いても値段も分からないし、原木の単価基準となる重さも分からない。ここでは日本式のスピード感と即決感で仕事をするよりも、仲良くなるのが先決なんだろう。聞き間違いでなければ何千万円かと言っていたアンティークになるほど前に作られたクラロのどでかいデザイナーズテーブルがある家を案内してくれる彼らと話をしていると、そりゃまだ顔も見ていない渡米前のやり取りがイマイチかみ合わない訳だ、なんて妙に納得した。とはいえ大らかで人の良いパートナー達と質の良い原木にたくさん出会えた嬉しさで大満足の訪問だった。 その後、日本で写真を振り返りながら感謝感激の気持ちでやり取りを続けていたのだが、テンガロンのオーナーは相変わらず憎めないところがあって、重さを図る秤がないとか、走っている車のサイドミラーにぶつかったとか、奥さんが交通事故にあったとか、(すべて本当なら天中殺じゃないのか?と思うほど。)さらに息子の結婚式が近いとか、スタッフが出産したとか、もう忘れたが怒涛のイベント三昧で思うようにコミュニケーションが取れなく困ったが、そんな事も含めて初アメリカの仕事を楽しめた。その後、原木を何とかゲットでき、製材を経て素晴らしい玉杢や縞杢の出る貴重な一枚板になり、さらにお客様の手に渡ったのを見たときは、それはそれは感慨もひとしおだった。